映画のこと

クリント・イーストウッド監督、主演『運び屋』


2019.3  なんばパークスシネマ

監督・主演 クリント・イーストウッド

ブラッドリー・クーパー/マイケル・ペーニャ

<あらすじ>

90歳を迎えようとしているアールは

昔から家族と過ごす時間よりも、

自分が育てて生計をたてている

デイリリーという花のことを最優先し、

かつて、デイリリーの品評会の日に重なってしまった

娘の結婚式にも出席しなかったほどでした。

ずっと調子よく好成績を収めて来たアールでしたが、

インターネットの普及によって、

商売がうまく行かなくなり、

家や財産を失ってしまいます。

おんぼろの車一台に荷物を乗せ、

孫娘の結婚のガーデンパーティーに顔をだしました。

思わぬアールの登場に孫娘は喜びますが、

娘や妻はアールに冷たくあたります。

パーティーに参加することもできず、

帰ろうとしたところに一人の男がアールに話しかけます。

メキシコからアメリカに荷物を運ぶだけでお金になる仕事があるので、

興味があればここへ連絡するように、、、と名刺を渡します。

早速電話をし、呼び出されたアールは

車ごと倉庫の中へ誘導されます。

若い男たちに絶対に中身を見ないように言われ、

中身が気になるアールですが、

見るのはやめにして、

目的地まで車を走らせます。

約束通り言われたところに車を停めて、

指定されたホテルに入ります。

少しして戻ってみると、車のダッシュボードに

報酬の大金が入っていました。

メキシコの麻薬カルテルの運び屋の仕事だったのです。

警察からマークされることもなくきっちりと

仕事をやり遂げるアールは

カルテルのメンバーから気に入られるようになり、

次々と仕事が回ってくるようになります。

年老いてからも強運の男は家庭とは無縁の人生でした。

<感想>

この作品は悲しい話でも、感動の話でもないです。

自分勝手に生きて来た男が、

年老いてからまさかの事業の失敗で財産を失い、

路頭に迷うところを危険な運び屋という話に乗り、

大金を手にするというものですが、

90歳という設定の老人の言葉がなかなか重いのです。

現代社会では携帯電話で用を済ますのが普通で、

わからないことはネットで検索、

連絡を取るのはメール、

とにかく誰もが携帯電話に頼り過ぎていることを嘆きます。

ネットに頼っている我々は、ネットがなければ何もできないのです。

また、アールは昔から安全運転なのですが、

運び屋を始めてからももちろん安全運転です。

そして、寄り道したいときに車を停めて、

車の小旅行を楽しみながら自由に車を走らせます。

あるとき組織の男がアールに銃を突き付けて、

こちらの言う通りの行動をするように脅すシーンがあるんですが、

そこでアールは「戦争行ったんだからそんなもの怖くない」と、

若造の脅しにはひるまないのです。

この「戦争に行ったんだから」という言葉が、

色んな人の死に直面してきたという

アールの重たい経験が観ている者に響いて来ます。

この90歳の老人は、この歳になって家族の在り方を考え反省します。

後悔こそしませんが、娘の結婚式にも出なかったこと、

家族を顧みずに自分のやりたいことだけをやり続けたことを反省し、

病気になった妻の枕もとで語ります。

最後にアールは逮捕され裁判にかけられますが、

理由はどうあれ、悪いことは悪いんですから、

知っていようがなんであれ、麻薬の運搬に加担してはいけません。

このアールという老人も実在の人で、

本当に車で麻薬の運搬をしていたそうです。

麻薬の運搬といえば、飛行機でかなりの量の麻薬を運んだ

バリー・シールも有名です。

トム・クルーズが演じた映画ですが、

この映画はなかなか大規模な運搬で、面白いです。

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