湊かなえの原作は、小説でもドラマでもゾクッとします。
今回の「ポイズンドーター・ホーリーマザー」は、前後編のもの、一話完結のもの、合わせて6話です。
人物は思春期の娘、成人した女性、中年の母親、など、色んな女性が出てきますが、女性の心理を描いていますが、この心理が難しい、、、。
設定こそ色々ですが、主人公となった女性は一見静かだけれど明るい女性です。自分をしっかり持っている芯の強い人で、正義感も人一倍あるような、ちょっとコミュニケーションを取るのは上手な方ではないけど、いい人です。
しかし、このいい人が色んな誤解をしていて、サスペンスへと発展して行きます。思いが深いからこそ生まれる誤解。これがなかなか怖いぃ~~。
1話、2話は「ポイズンドーター・ホーリーマザー」は、女優の娘とその母親の物語です。老人ホームで働く母は、職場では女手一つで娘を育て上げ、苦労人の母親として慕われています。
一方女優の娘は、いつも母親に束縛され、しっかり者の母親のためにいい娘を演じ、母からの愛情を窮屈に思っていました。
前半は娘目線のドラマの展開なので、この母親は子離れできなくて娘を自分の思うように操りたいと思っていて、暴力こそないけれどこれってある意味親からの虐待みたいなものよねぇ~、、。ひどい母親だ、、、。
なのですが、後半の母親目線の展開になると、なんて言い母親なんだ。娘は結局自分よがりのわがままじゃないか!みたいなことになるんですが、結局のところ、密な関係でいながら分かり合えていなかったところの心理の難しさを描いています。
母と娘という密でありながら、実は娘はその母からの愛情の重さを重たく感じつつ、それを押しのけることもできずに大人になり、いまだにその重さから逃れられずに母親を傷つけてしまいます。
第3話は「罪深き女」です。
この「罪深き女」は怖かったですねー。
これは1話とは違って、母と高校生の娘の2人暮らしのアパートの2階に、若い母親と少年の2人が引っ越して来て、この高校生の娘が少年のことを勝手に不憫な子どもだと思い込んでしまうことから起こる恐ろしい展開です。
高校生の娘は優しい子なんです。少年が独りぼっちでアパートの前にいたり、母親に怒られているところを目にしたり、放っておけないんですよ、少年のことが。
少年の家には男の人がやって来て昼間っから騒がしかったり、物音に無頓着で、まわりに迷惑をかけていて、、、。娘の母親も2階の母親のことにイラついていました。
スーパーで見かけたり、家の前で見かけたり、とにかく寂しそうにかわいそうに見えるその少年を放っておけない娘は、食べるものを差し入れしてあげたり、一緒に話してあげたり、部屋に上がって一緒に宿題をしたり、虐待されているその少年を私が守ってあげる、それが私の使命、、、とまで思ってしまうのです。
見ているこちらは、高校生だとどこに相談しに行けばいいか、わからないもんね、、、少年はもう虐待されないといいけど、、、くらいに思ってしまいます。
しかし、小学生だった少年は青年となり、あるときこの娘と電器店で出会います。懐かしく思った娘は「覚えてない?幸奈だよ」と話しかけますが、相変わらず彼は無口で何も言わないので、娘は自分の電話番号の書いた紙を渡します。そのあと彼は商店街で無差別殺人犯となり、刃物で通行人を何人も殺してしまうのです。
「罪深き女」はもちろん幸奈ですが、勝手な一方通行は罪過ぎます。
娘の正義感からの思い込みが悲劇を生んでいるんですが、後半で娘の勝手な思い込みで少年が虐待されていることになっていたり、この娘の母親も狂気気味で手が付けられない性質であったこともわかり、この母親に育てられていたのなら、少し性格がゆがんでしまっても仕方ないのかな、、、と思ってしまいます。
しかし、虐待とか、母子家庭とか、近所つきあいとか、今ではありがちなテーマですが、難しいですね。
身近でありそうなテーマなだけに、他人はどこまでよその家庭に首を突っ込んでいいのか?この娘は、苦労して自分を育ててくれている母親に余計な心配をかけたくないから、私一人で2階の少年を助けてあげる、、、と思ったのがそもそもの間違いなのですが、、。
無差別殺人を起こした彼のこの行為については真意は明かされないのですが、彼とこの娘との関係が最後には明かされますが、あまりにも娘が報われない。
どの話も展開が静かなので、冷ややかなんですよね、伝わるものが。もうそれだけに描かれてる心理描写が怖い、怖い、、、。